処分寸前の鉄屑に、音楽の魂を ~Volumio3 錬成の儀~
このオアシスの水は、少々奇妙な味がする。成分(ソースコード)を詳しく調べてみる必要がありそうだ。
かつて、AirMac Expressという魔法の箱から、光の糸を伝ってオーディオに音楽を飛ばしていた日々は、遠い昔の物語となった。ふと、昔買ったCDのメロディが聴きたくなったが、もはや我が家にあるのは電子の欠片のみ。手軽にあの頃の音色を奏でる、新たな音楽サーバを探す旅が、今、始まる。
旅の相棒として白羽の矢を立てたのは、音楽再生に特化したOS「Volumio3」。しかし、公式という名のオアシスはひどく不安定で、イメージという聖杯を手に入れることさえ困難を極めた。ならば、道がないなら創ればいい。GitHubという古文書の宝庫からソースコードを手に入れ、自らの手でVolumio3を錬成する。処分寸前だったIntel NUCという鉄屑の器に、音楽という魂を吹き込む、壮大な儀式の記録だ。
この羊皮紙のあらまし
- この羊皮紙のあらまし
- この羊皮紙が導く者
- 儀式の祭壇:処分寸前のIntel NUC
- 第一の儀式:Volumio3の錬成(ビルド)
- 第二の儀式:魂を器へ(イメージ展開)
- 第三の儀式:魂との対話(セットアップ)
- 羊皮紙を巻く前に
- 砂漠で見つけた魔法のランプ
- ラクダの独り言
この羊皮紙が導く者
- Volumioという音楽のオアシスを、自らの手で創り出してみたい錬金術師
- Raspberry PIやIntel NUCといった、小さなゴーレムに新たな命を吹き込みたい冒険者
儀式の祭壇:処分寸前のIntel NUC
当初はRaspberry PIで儀式を行う予定だったが、PCでも可能と知り、倉庫の奥で埃をかぶっていたIntel Celeron搭載のNUC (NUC5CPYH)を祭壇に選んだ。光の音色を紡ぎ出すため、USB-DDC「FX-D03J」も用意した。

第一の儀式:Volumio3の錬成(ビルド)
Volumio3はDebianという大地の上で育つ。今回はDebian 12の仮想環境で錬成を試みたが、無事に成功した。(WSL2の大地では、なぜか儀式は失敗するので注意が必要だ) 儀式に必要なパッケージを揃え、GitHubから古文書(ソースコード)を授かる。
# 必要な魔法の道具を揃える sudo apt install -y build-essential ca-certificates ...(中略)... qemu-utils # 古文書を授かる git clone https://github.com/volumio/volumio3-os.git build
rootという神の姿となり、錬成の呪文を唱える。READMEの古文書通りに一度で唱えると魂の一部が欠けるため、二度に分けて詠唱するのが成功の秘訣だ。
cd build ./build.sh -b x64 ./build.sh -d x86_amd64 -v 3.0
儀式が完了すると、「Volumio-3.0-yyyy-MM-dd-x86_amd64.zip」という名の魂の結晶が生成される。

第二の儀式:魂を器へ(イメージ展開)
Rufusという魔法の道具を使い、魂の結晶(imgファイル)をSSDという器へ注ぎ込む。

これで、鉄屑のゴーレムに命を宿す準備は整った。
第三の儀式:魂との対話(セットアップ)
NUCに魂を宿したSSDを接続し、電源を入れる。しばらく待つと、魂との対話画面が現れる。
言葉と時を合わせる
まずは「日本語」「Asia/Tokyo」を選び、我々の世界の理を教える。

魂の成長(システム更新)
次に、システム更新の儀式を行う。「Manifestデザイン」という美しい衣装を纏わせるため、この儀式は必須だ。更新中に進行表示が固まることがあるが、それは裏で利用規約という名の契約書にサインを求められているだけ。慌てず、儀式をやり直せば魂は成長する。

世界との接続(ネットワーク設定)
初期状態では、魂は自ら電波を発し、外界との接続を拒む。ホットスポット設定をOFFにすることで、初めて我々のWi-Fiネットワークに繋がるようになる。

音色を紡ぐ(再生設定)
オーディオ出力先を「FX-D03J」に指定し、光の糸を伝って音色を紡ぐよう命じる。

宝物庫への道(Samba設定)
Windowsから宝物庫(Internal Storage)へアクセスするには、Sambaユーザーという名の合言葉が必要だ。SSHで魂に直接語りかけ、pdbeditコマンドで合言葉を設定する。

これで、iTunesの音楽データなどを宝物庫へ運び込み、ライブラリを更新すれば、儀式は完了だ。
羊皮紙を巻く前に
自らの手で錬成したVolumio3は、無事に音楽を奏で始めた。処分寸前だった低スペックのNUCでも、レスポンスに少し間があるものの、音楽サーバとして十分に機能している。 この成功体験は、Raspberry PIよりも、むしろ手頃なミニPCを選択する方が賢いのではないか、という新たな気づきをもたらしてくれた。
今回の儀式の注意点をここに記す。
- 錬成の儀式はDebianの大地(Ext4)で行い、呪文は二度に分けて唱えること。
- 魂が美しい衣装を纏うのは、システム更新の儀式の後。
- Wi-Fi接続は、ホットスポットという名の結界を解くことで可能になる。
この羊皮紙が、あんたの新たな音楽の旅の始まりとなれば幸いだ。
焚き火の火も小さくなってきた。夜が更ける前に、筆を置くとしよう。
おまけ:完成した祭壇
NUCの背後にFX-D03Jを隠し、ミニコンポと光の糸で結ぶ。旧型のiPad miniをリモコン代わりの魔法の石板として添えれば、いつでも懐かしいメロディを呼び出せる、最高の音楽祭壇の完成だ。

懐かしのMETAL GEAR SOLID 3のサントラを再生すると、美しいジャケットが表示される。そういえば、あの伝説がリメイクされるらしい。「いいセンスだ」…思わず、そう呟いてしまった。
砂漠で見つけた魔法のランプ
ラクダの独り言
ご主人が、鉄の箱から音楽が流れるようにするのに夢中になっている。昔は、俺の背中に乗って、鼻歌でも歌いながら旅をしていたもんだがな。便利なのもいいが、たまには自分の声で歌ってみるのも悪くないと思うぜ。おっと、腹が鳴っちまった。