砂漠の旅人(たびと)|新天地:たびとの旅路

電脳砂漠を旅する、ある旅人の日記。フロッピーを頼りに歩いた日から、クラウドの地平を見つめる今日まで。見つけたオアシスも、迷い込んだ砂の迷宮も、全てこの羊皮紙に。

トラックボール沼の終着駅 ~なぜ私はロジクールの安息所を捨て、Kensingtonの「王の宝珠」へ向かったのか~

地平線の向こうに、新たなオアシスの影が見える。逸る気持ちを抑え、まずはこの羊皮紙に期待を記しておこう。

数ヶ月前、私はロジクールトラックボール「ERGO M575S」という、快適な安息所を見つけた。親指でボールを操る“サムタイプ”は、長年連れ添ったマウスからの乗り換えを優しく受け入れ、私はその快適さに完全に満足していた。もはや、この旅は終わったのだと。

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しかし、心のどこかに、ずっと忘れられない景色があった。 それは、人差し指で大玉を操る“フィンガータイプ”という、遥か頂きに座す王者の姿。かつて一度だけその宝珠に挑み、あまりの作法の違いに即座に逃げ出した苦い記憶が、私の魂を燻らせ続けていた。

「サムタイプという修練を積んだ今なら、あの宝珠に手が届くのではないか?」 それは、安住の地を自ら捨て、トラックボールという快適な沼の、さらにその先にある「終着駅」を目指す、新たな挑戦の狼煙だった。

この羊皮紙のあらまし

この羊皮紙が導く者

  • トラックボールという、未知の神器に興味を抱く者
  • サムタイプという安息所から、フィンガータイプという頂きへの道を探す探求者
  • Kensingtonのトラックボールが、なぜ「王」とまで呼ばれるのか、その伝説の真実を知りたい冒険者

王者の選択:Kensington SlimBlade Proという宝珠

フィンガータイプへの再挑戦。それは、雪辱戦だ。ならば、最高の武具で挑みたい。数多の古文書を読み漁り、私が辿り着いた答えは、やはりトラックボールの始祖にして王、「Kensington」だった。

候補は二大巨頭、「SlimBlade」と「ExpertMouse」。最終的に私が「SlimBlade」を選んだ決め手は、その高さだ。ExpertMouseは見た目以上に背が高く、愛用の薄型キーボードと並べた時の段差が、私の美学に反した。シームレスな操作感を求め、SlimBlade Proに決定。そして、どうせならとAmazon限定の、漆黒のボディに鎮座するクールな黒玉モデルを選んだ。

開封の儀:宝珠の威光

Amazonから届いた簡素な箱を開けると、その主は静かな威光を放ち、鎮座していた。

静かに鎮座する、漆黒の宝珠

第一印象は「想像以上に大きい」。光沢のあるボディは、部屋の景色を映し込むほどの輝き。付属品のナイロン編みのケーブルや、コネクタに刻まれたロゴの一つ一つに、王者の風格が漂う。

その威容は、想像を遥かに超えていた

宝玉は本体に乗っているだけ。指でつまめば簡単に持ち上がり、日々の手入れも容易い。

手入れさえも、王の所作のように優雅だ

愛機Keychron K15 Proと並べると、まるで誂えたかのような完璧な一体感。黒玉を選んだ私の選択は、やはり間違っていなかった。

二つの神器が、完璧な祭壇を創り出す

真価を解放する儀式:KensingtonWorksとツイストスクロール

この神器の真価は、専用ソフトウェア「KensingtonWorks」をインストールすることで解放される。そして、SlimBlade最大の特徴がツイストスクロール。宝玉を水平にひねると、画面がどこまでもスクロールするのだ。その際、本体から響く「カリカリ…」という音は、まるで古の金庫のダイヤルを回すかのような、官能的なフィードバックを与えてくれる。

宝玉をひねり、世界の時間を操る

羊皮紙を巻く前に:私がここを「終着駅」と呼ぶ理由

過去の挫折から、フィンガータイプには相当苦戦する覚悟だった。しかし、驚くことに、買ったその日からごく普通に使えたのだ。サムタイプでトラックボールの作法に慣れていたことが、私を新たなステージへと導いてくれたのだろう。

今、二つの神器を知る私が、もし「どちらが良いか?」と問われれば、答えはただ一つ。 「Kensington SlimBlade Proだ」と。

その理由は、圧倒的な「移動の優雅さ」に集約される。 デュアルモニターの端から端へ。マウスやサムタイプでは手首や親指をせわしなく動かす必要があったその距離を、SlimBladeは、指先で宝玉をスッと撫でるだけで、魔法のように滑り渡る。

数万行のコードを旅する時も同じだ。宝玉を軽くひねり続けるだけで、画面はどこまでも流れていく。この「最小の動きで、最大の結果を得る」という感覚。それは、一度味わえば二度と後戻りできない、王だけが知る快感だ。

ただし、冒険者よ、心せよ。これから初めてトラックボールという神器に触れるなら、マウスからの違和感が少ないサムタイプから旅を始めることを強く勧める。まずはそこで「ボールで世界を操る」という基本を身につけてから、このフィンガータイプの宝珠を目指すのが、挫折なき王道だ。

私にとって、Kensington SlimBlade Proは、トラックボール探求の旅における、間違いなく一つの「終着駅」となった。手首は解放され、操作はより優雅に、そして直感的に。これは、快適なPCライフという名の楽園を求める、全ての冒見者に訪れてほしい「革命」である。

どうやらインクが切れそうだ。今日の記録はここまでにして、道具の手入れでもするとしよう。

砂漠で見つけた魔法のランプ

ラクダの独り言

この前、「もうこれ以上はない」とか言って、親指でコロコロする玉っころに満足してたはずなんだがな。今度は、もっとデカくて黒い玉っころを手に入れて、「これが終着駅だ」なんて言って、人差し指でうっとりと撫で回している。ご主人の「終着駅」ってのは、どうやらあちこちにあるらしいぜ。まったく、飽きねえお人だ。